Project Cycle Management - Implements

  PCM-I 研修実施!

平成17年6月14日、15日の2日間、国際協力機構(JICA)が招聘した海外からの研修生を対象に PCM-I の研修を実施しました。

前半は従来のPCM計画立案の演習。関係者分析からログフレームの作成までを行ないました。

後半、ここが PCM-I の I たるところです。WBS、クリティカルパス、スケジュールバーチャート、調達管理、人的資源管理、プロジェクト会計、リスク管理、コミュニケーション管理、モニタリング評価を、演習と講義を取り混ぜて行ないました。盛りだくさんです。

今回の本ウェブサイトは、これまでとは趣向を変えて、研修風景ではなく、研修内容をお伝えします。ぜひ研修を追体験してみてください。

 

                                                                                                                  

 

いきなりですが、「プロジェクトって、なんですか?」

研修生の皆さんに、二つのグループに分かれて、それぞれにプロジェクトの定義を考えてもらいました。

両グループとも、「問題を解決するための一連の活動の連なり」という趣旨のお答え。 こちらが望んだとおりの定義が出てきて感激!

というのは、PCMは「問題解決型アプローチ」だからです。つまりPCMはプロジェクトを問題解決の手段と捉えているのです。

 

一応、PMBOKの定義を確認します。

プロジェクトは「独自なもの」を生み出す「有期的な」業務です。

「独自なもの」つまり、プロジェクトは常に前例のない新しいものを生み出す試みです。

だからプロジェクトを成功させるのはむずかしいのです。

だから体系的マネジメントが必要なのです。

 

これはPMBOKのいうプロジェクト・サイクルです。

従来の「PCM計画立案」は、「計画」と呼ばれていますが、この図でいうと、Initiating Process、つまり「立ち上げプロセス」ですね。

なぜなら、PCM計画立案の最終成果物はログフレームですが、これはプロジェクトのスコープ定義に相当するものだからです。

 

研修日程です。

う〜ん、2日でやるには無理があるなぁ・・・。

 

立ち上げプロセスの第1段階は「関係者分析」です。

プロジェクトに関わる利害関係者をすべて洗い出し、受益者、実施者、財政負担者などに類別します。

さらに個々の利害関係者の特徴を詳細に分析し、プロジェクトのターゲットグループを決めます。

ターゲットグループとは、プロジェクトの実施によってその人たちの問題を解決することが意図されるグループです。

 

立ち上げプロセスの第2段階は「問題分析」です。

ターゲットグループが抱える問題を、原因−結果の因果関係で分析し、系図にします。

 

問題系図の問題を、それが解決された状態に書き直すことによって、問題解決の手段を洗い出すのが「目的分析」です。

その中から実行可能な要素を選び出すのが「プロジェクトの選択」です。

研修の都合上、うんと簡略化した系図にしました。

 

立ち上げ段階の最終成果品はログフレームです。

プロジェクトの諸目標、活動、到達目標値、投入資源、リスクなどを1枚の表にまとめたものです。

これを一瞥すると、プロジェクトのスコープが、その論理構成まで含めて一目で見渡せる優れものです。

 

「立ち上げプロセス」が終わって、いよいよ「計画プロセス」です。PCM-I の I たるところに入ってきました。

実はこの時点ですでに2日目の午後です。あと半日しかない!

 

計画プロセスの第1段階は、ワーク・ブレークダウン・ストラクチャ(WBS)、すなわち活動内容の詳細化です。

PCMとPMBOKを融合させる利点のひとつは、目的系図を使用することによって、非常に面倒といわれるWBS作成が、いとも簡単にできてしまうことです。

プロジェクトマネジメントに初めて触れる海外研修生も、わいわいと楽しみながら、立派なWBSを作りました。お見事!

 

ブレークダウンした活動ひとつひとつに、その実行に必要な時間、経費、主要な施設や機材を書き出していきます。

WBSは、このあとの日程計画、調達管理、資源配分計画、予算計画といったすべての作業のもとになるもので、非常に重要な作業なのです。

 

 

WBSができたら、それにプロジェクト実行組織の組織図(OBS)を重ね合わせることによって、各活動の担当部署と責任部署が明確になります。

また、活動の負荷が偏っていないかどうかもチェックできます。

ここは講義だけです。演習はしませんでした。

 

系図状のWBSを一覧表にまとめなおします。後々の作業はこの方がやりやすいのです。

表形式のWBSに作業順序を記入していきます。

赤で書かれたところは、各作業の先行作業を示します。

 

作業順序と先行作業を決めたのは、クリティカルパスを見つけるためです。

これは説明用のパワーポイントです。

説明を聞いただけで、研修生の皆さん、「だめだ。できない。難しすぎる」と、挫けそうに・・・。

 

「いや、やってみよう。やればできるよ」という前向きな研修員さんの力強い一声で、とにかくやってみることに。

まったく、やればできます。ちゃんと正しいダイアグラムが書けました!

次はクリティカルパスの計算です。

クリティカルパスとは、もっとも所要時間がかかる作業工程で、余裕がゼロの工程です。つまり、絶対遅れてはいけない作業工程です。

 

ごちゃごちゃしていますが、できました! 計算も正しいです。

プロジェクトマネジメントに初めて触れる海外研修生のみなさんにも、やればできるということが分かりました。

クリティカルパスと、逆に余裕のある作業の余裕日数(フロート)も計算されました。

実はこの余裕日数が、このあとの調達管理と人的資源管理に重要な役割を果たすのです。

 

ですが、ここまでで2日目もタイムアップ。

後は駆け足の講義になりました。

これは「調達管理」です。調達品がいつ納入されるかは納入業者にかかっています。どうしても希望日に納入できないということがわかった場合、上で計算した余裕日数で遅れを吸収できないかを考えて、スケジュールを変更します。

 

次は「人的資源管理」です。

負荷が大きくなりすぎる作業を、余裕日数内で動かすことによって、負荷の平準化をはかります。

左図の点線が余裕日数、その限度内で作業を遅らせれば、それに係る作業者の負荷を後にずらすことができます。

 

赤色がずらした作業と、ならされた人的負荷です。

こういう操作をするためには、クリティカルパスの計算をして、余裕日数(フロート)を出しておく必要があるのです。

「なんでこんな面倒なクリティカルパスなんてやらなきゃならないの?」という研修生さんの質問への答えです。

 

「プロジェクト会計」では、キャッシュフローを重視します。

支払い時期と支払い金額をまずバーチャート上にプロットし集計します。

さらにそれをキャッシュフロー表にまとめます。

先払い、後払い、隔月払いなどなど、支払いも単純ではないのです。

 

「リスク管理」は、ログフレームの「外部条件」を詳細化し、それらをリスク・マトリックスを使って定量化します。

ログフレームの「外部条件」は、立ち上げ時に予測されたリスクです。

それらのリスクが、どれくらいの確率で起こり、起こった場合にどれくらいの影響があるかをマトリックスで定量化します。

 

予測されたリスクの内容とその影響度、それらリスクが起こりつつある状態を示す現象(トリガー)、起こったリスクに対する対策などを、リスク管理表にまとめます。

 

次は「コミュニケーション管理」です。

コミュニケーション管理は、報告書と会議を「計画」し「実行」することです。

コミュニケーションは「計画」されなければなりません。

計画されていないおしゃべりは、プロジェクトを管理をするためのコミュニケーションではありません。

 

「モニタリング」では、支出(経費)と工程(完了作業量)の両方を統合して見ないと、プロジェクトの実態を見失います。

仮に支出が計画より低くても、喜んではいられません。

支出が低くても、工程が遅れていたら、それは予算超過とスケジュール超過の両方をひきおこすことを意味しているからです。

 

上の説明は実施工程のモニタリングです。

プロジェクトの諸目標のモニタリングは、それとは別にモニタリング・システムをもちいて、ログフレームの「指標」の達成状況をモニターします。

モニタリングといった場合、この二つを行なう必要があるのです。

 

以上、最後は駆け足になりましたが、みなさん頑張りました。

お疲れ様でした!

ぜひ、概念作りで終わらない、現実的な実行を見据えたプロジェクト計画を行なってください。

 

最後にひとこと。

覚えておいてください。

「計画」に全プロジェクト期間の10%以上をかけないプロジェクトの70%は失敗(!)しているのです。

3年のプロジェクトなら、3ヶ月は計画にかけないといけないということです!

 


お名前は伏せますが、長期にわたる研修期間内に、本PCM-I 研修を組み込んでくださった

研修受け入れ先の担当者の方、PCM-I 研修を提案してくださった企業の方々、これらの申

し出を受け入れて研修を実施してくださったJICA担当者の方々、そして、短時間に多量の情

報を浴びせられてもものともしないで、しっかり最後までついてきて下さった研修生の皆さん、

本当にありがとうございました。 心から感謝いたします。 

今回の研修を通して、PCM-I の様々な可能性や改善点を発見することができました。おかげ

さまで、「PCM-I 実践編」確立の目処が立ったように思います。

今後ともご支援のほど、よろしくお願いいたします。

 

平成17年6月17日

大迫正弘